「あんた、ちょっと目立ち過ぎ……前々から気にいらんかったんよね」

「そんなん言われたかて……」

「なんやお前、うちらに口答えすんのんか」


 紀子は又かと思い、うんざりした。

 小学生の高学年頃から、彼女はいわれなきイジメを受けるようになった。

 同級生達よりも数段大人っぽい面立ちと、少女とは思えないなまめかしさが、その理由だった。

 教師達までが、その視線の片隅に紀子の妖しさを認め、それが周りの少女達には面白く映らなかったのだ。

「あんた、池上君に色目つこうたやろ。祥子の彼氏って知っとるくせに、この尻軽女が!」

 いきなり紀子の腹に蹴りが飛んで来た。

 毎度の事。


 こんな事もう慣れっこや……

 嵐が通り過ぎて行くのをじっと耐えていればいい……


 紀子は何時も自分にそう言い聞かせ、理不尽な暴力に堪えていた。


 見た目の派手さとは逆に、口数の少ない、自分を極力控えめに見せようとしていた紀子が、百八十度変わったのは、中学二年の夏であった。

 変化の原因は、突然にやって来た。

 夏休みも残すところ一週間を切ったある日、強姦された。

 相手は同級生の兄であった。

 地元では名の知れた暴走族のリーダーで、近所のコンビニへ行った時に偶然、声を掛けられた。

 改造されたいかつい車に無理矢理押し込められ、町外れの工場跡に連れ込まれた。

 そこは、前々から不良グループや暴走族達がたむろしていた場所で、巡回の警察官が襲われたりした事もある場所だ。

 普通の人間は絶対に近付かない。

 廃屋の中に連れ込まれた時、紀子は死ぬかも知れないという恐怖に襲われた。

 リーダー格の少年が、他の者を制して廃屋の奥へと紀子を引っ張って行った。

 恐怖で全身が硬直し、声すらも上げられない。

 錆だらけのくず鉄と化した機械の陰で、紀子は凌辱のかぎりを尽くされた。