(なんやろ、アタシって昔から不倫体質っていうかさぁ、どうも真っ当な恋愛ってした事ないねん)

「へぇ……」

(今の彼は、不倫とは違うけど、別に付き合ってた男もおったし、どうも好きになったら我慢がでけへんみたいなんよ)

 彼女は人事のように、そんな話しを明るい声で告白した。

 告白と言うと何だか重苦しい雰囲気が漂う。

 が、話しの内容とは裏腹に、普通に世間話をするかのような語り口が、何年経った現在でも一輪の向日葵の如き清々しさを感じさせてくれた。

(でもまあ、あんたがこの世界に戻って来て、喜んでる人も大勢おるんやから、そんくらいの事で考え込む必要ないんちゃうの。まあ、そう何度もあったらあかんけどな)

 電話の向こうから笑い声が聞こえた。

 僕は、不始末をしながらも、再びこの世界に戻って来た事への後ろめたさを愚痴っぽく彼女に話していた。

 それを明るくさらりと受け流す彼女に、僕は感謝した。

 押し付けるように当てていたケータイが痛い。

 少しずつ心が解けて行った。


(アタシもいろいろあったけど……高校の時には もうお水の世界に入っててなあ、で、そん時から男の狡い所やしょうも無い所をぎょうさん見て来た筈なんやけど……)

 僕に話すというより、姿月はまるで独り言を言うが如く自分の身の上話しを語り始めた。