眉間に寄せられた皺が深い分だけ、彼が辛い思いをしているのだろうと伝わってくる。可哀想だ。そんなに険しい顔をしていたら、折角の綺麗な顔が台無しだ。…って、そんな顔をさせたのは私か。

「…ごめんね。本当は少し避けてた」

目は真っ直ぐに彼を見つめた。さっきは嘘をついて誤魔化してしまった私だけど、もう本当の話をしているよと、伝わればいいなと思った。

「白井君と会うのが気まずくて、会わないようにしてた」
「俺、何かしちゃった?」
「え?」
「勝手に仲良くなれたと思ってたから分からなくて。あの日俺が相原さんに何かしたなら謝りたい」

ものすごく申し訳無さそうに、白井君はポツリと私に言う。「でも何をしたのかが、どれだけ考えても分からないんだ」と。ーーその瞬間、私の中で彼への想いが膨れ上がった。素直で不器用で優しいあの日の白井君が、ハッキリくっきり輪郭を表す。押し込めた決して多くは無い思い出の中の白井君の姿が、これ以上無い程に輝き出す。

「何もしてないよ!何も嫌な事なんかされてない」

ギュッと、胸が押し潰されそうだった。

「いつも白井君には元気にして貰ってて、そしたらもっと白井君と話したくなって、いつも目で追うようになっちゃってて、でもそんなのダメだから」
「ダメじゃないよ。俺だって話したかった」
「っ、」
「俺は気の利いた事とか出来ないし、気持ちを汲み取ったりするのも苦手だけど、相原さんは受け入れてくれるのが嬉しかった。もっと仲良くなりたいと思ったよ」
「で、でもダメなんだよ。ダメなの、ダメなの…っ」