「……」
「?また、明日ね…?」
「……」

何故か目の前でピタリと止まった白井君は何も言わなくて、私はそそそっと笑顔を貼り付けたまま視線を逸らした。なんだ?めちゃくちゃ気まずい。なんで何も言わないの?なんで無言でこっち見てくるの?

「…あー、白井君部活だよね?ほら遅れちゃうよー」

ひらりと手を振ってへラヘラ笑ってみせて、その場を去ろうと思った。心臓が不整脈レベルなのは、きっと白井君に動揺しているせいだ。地面がふにゃふにゃグラグラしてるような気さえした。

早く行かなきゃ。久しぶりに白井君と話した。白井君やっぱり背が高いな。白井君の低い声ってなんか安心するんだよなぁ、心臓の底に落っこちてくるみたいで。久しぶりに聴きたくて期待してたのかも。だからドキドキしてるのかな。

「じゃあねー」

頭の中はもう混乱してるレベルで白井君の事を考えていたけれど、そんな事バレる訳にもいかないのでそそくさと昇降口へ向かう。と、その時。パシッと後ろから何かに手首を掴まれて、私の足が止まった。

「なんで避けるの?」

慌てて振り返ると、私より高い位置から突き刺さる視線に射抜かれる。

「さ、避ける?」
「うん」
「誰が?」
「相原さんが」
「え、そ、そうかな…?そんな事無いよ」

惚けてみせたけど、すぐに後悔した。だって白井君は怒ってなかった。傷ついた顔をした。今私が惚けた事で、白井君を傷付けてしまったのだ。

「……」
「…白井君…」