私を見下ろしながら"阿呆"と連呼する鳳の後ろからは成瀬がゆったりとした足取りでこちらへ歩いて来ていた。
「…これ殺ったのお前か?」
成瀬が倒れた数十人もの男達を見ながらそう尋ねてきた。
「そうだけど、何」
「なるほど…『Sapphire』のメンバーから"女が数十人もの男を圧倒している"と連絡があったのでどんな珍獣かと思えば、貴女だったとは」
…珍獣とは失礼な。たまたま巻き込まれただけだってのに。あぁ、面倒臭いな。
「…で、用がないなら帰りたいんだけど」
「リョウガ、こいつら『Ruby』の奴らですね…少々不味いのでは?」
「…あぁ」
私を放置されたまま話し合いが始まってしまった。帰ろうかと足を動かしたが、鳳に腕を掴まれてそれは叶わなかった。