思った以上に手応えのない相手で拍子抜けだった。物足りなさを感じながらもスマホで時間を確かめると現在『22:50』。意外と時間がかかってしまったな…と後頭部を掻きながら歩き始める。…が、


「…死ねぇ!」


私の背後から、ナイフを振り上げてくる男がいた。気づけば目の前で、もう間に合わない…そう思った。諦めて大人しくナイフを受けようと目を閉じた時、


…ガシャン!



「…っ油断ですか?阿呆ですね」


聞き覚えのある声が聞こえ徐々に目を開くと、私の視界に映ったのは


…少し息を弾ませた鳳が、藍色の髪を掻きあげながら立っている姿だった。


「何大人しく刺されようとしているんですか、阿呆ですね」