梓side
あの日の生徒会室での出来事から数日。
教室棟と総合棟に囲まれて存在する中庭は私のお気に入りになっていた。毎日のように、中庭の中心に堂々と聳え立つ大樹の幹に寄りかかりながら一日の大半をここで過ごすのだ。
「今日もいい風だな…」
授業はどうした…?と思う人も多いだろう。だがそれは問題ない。この高校は単位制ではない上、私は教科さえ読めば理解できるからな(中学模試3年連続首位)。
夏にはまだ涼し気な風を浴びながらぼーっとしていること数分。
「貴女はまたサボりですか…授業に出ないとは頂けませんね」
呆れを含ませた声が後ろから聞こえ首だけそちらへ向けると、こちらに歩いてくるのは藍色メガネ…もとい鳳だった。
「生徒会室からここは丸見えなんですよ」
「…そう。何か用」
話しかけられたことに若干の不審感を抱きつつも尋ねる。鳳は少し考える素振りを見せ、話し出した。