ゆるゆると色気を撒きながらそう話すこの男が、本心で『大歓迎』などとは微塵も思っていないことは容易に理解出来た。しかし、こちらも同じなのだ。勝手にその感情を向けられるのはお門違いだぞ…と、睨みをきかせておいた。
「トウマが悪いな。俺は来馬優、2年だ。迷惑かけると思うがよろしく頼む」
恐らくこのメンツの常識人であるダークレッドの男は、かなり高身長だと分かる。…まるで保護者だ。
「…さて、次は俺ですね」
室内に、静かで淡々とした声が響いた。発声源である男は黒い一人がけソファーに座り、パソコンを持ったまま長い脚を優雅に組んでこちらに視線を向けていた。
彼は、メガネをカチャリと中指で上げると話し始める。
「俺の名前は鳳幸弥(おおとりゆきや)、2年生です。安心してください。貴女には危害は加える気は一切ないので。よろしくお願いします」
先程の詮索の視線はこいつだろう。それは今現在でも変わることはなく、メガネの奥の瞳が鋭く光っている。まるで私の一挙一動見逃さないような…。