「みんなビックリしますよね〜。美人さんでしょ〜?」

先生の間延びした声を聞いても依然として茫然スタイル。

すると突然、

『ぱん!』

と先生が大きな音で手を叩くとクラスメイトは我に返ったのだ。…まるで調教師だな。

「それでは、自己紹介お願いします」


自己紹介、ね。私は目立とうとつゆにも思っていないため、







「…神楽梓(かぐらあずさ)です」







この一言で充分である。




どうせ、私の記憶が戻ればこのクラスのこともこの学校の事も忘れるのだから。


ならば、最初から皆の脳内に『私』という存在が不確定な人間を残してはいけないと思うのだ。