後ろを振り向けば、倒れて意識を失った護衛がふたりと、ひとりの男に腕を掴まれているサクラ。もう一人の護衛はナイフを向けられて身動きが取れない様子。サクラの目から涙がこぼれ落ちたその瞬間、
…目の前が真っ赤に染まる感覚になった。気づけばふたりの男は血だらけで倒れていて…あぁ、サクラ怖がらせちゃったな。その眼には"恐怖"の色が浮かんでいた。
歯止めが効かなくなった自分に自嘲し、残り半数の男達へ向き直った。
「…おい、護衛の」
「は、はい」
「…サクラを頼む。私はここを足止めする、だから今度こそ行け!」
私はもう、サクラを振り返ることはなかった。強い目で私の言葉に頷いた護衛が必ずサクラをアイツらのもとへ連れていくだろうと信じて。