あれから15分ほど経ち、ショッピングモールの近くまで来た。
「…すみません、ここで止めてください」
車内に静かなアズサちゃんの声が響き、タクシーが道の脇に停まった。タクシー代を出そうと財布を出せば、アズサちゃんがそれを抑えてお金を出してくれた。しかも、1万円札を出してお釣りはいりませんという台詞…なんて男前なんだろう。
冷房の効いたタクシーから降りた瞬間私達を襲う熱気。まだ降りてから数秒なのに汗が滲む。隣に立つアズサちゃんをチラリと覗くと、
「…あっちぃな」
そういいながらツヤがかった黒髪をかきあげて鬱陶しそうに呟いていた。たったそれだけの仕草なのに、色気がムンムンだった。駐車場を歩く人だけでなく私までその色気に顔を赤らめていた。