現在、タクシーの中。
照れながらも、全くしょうがねえな…と話すリョウくんの顔を思い出しふふっと微笑んでいると、
「…何か楽しそうだな、サクラ」
そう私に視線を送りながら話すアズサちゃんは、黒の半袖サマーニットに黒のスキニー、黒のスポサンを着こなしている。そして、左耳には変わらず黒のピアスが光っている。
「ねぇねぇアズサちゃん、ずっと耳につけてるその黒いピアスって…」
「…あぁ、これか。これは『Jet(ジェット)』って言う宝石らしい。誰かに貰ったらしいんだが、思い出せないんだよ。…ただ、これがいつもここにないと落ち着かないんだ」
…大事なものなのかな?
アズサちゃんはそう話しながら大事そうな表情で耳に触れる。だけど瞳の奥は何処か遠くを見ていて…それが気になっていた私はアズサちゃんが話した言葉の違和感を気にも止めていなかった。