「一体いつまで待たせる気っ!」



頭から角が生えているように見えるほど
怒りを露わにしているナンバー2は


歪めた綺麗な顔を一瞬で消した


「あんた・・・ムカつく」


そう吐き捨てるように言うと
私の腕を掴んで引き摺るようにトイレから連れ出した


「キャァァ」


通路の途中の扉を開けると
強引に中に押し込まれた

その不意打ちに足がもつれた私は
不細工にも躓いて転んでしまった


「クッ、いい気味」


入り口のドアに背中を預け
薄く笑うその姿に

背中を嫌な汗が流れた気がした


「で?」


・・・は?


「何が目的よ!」


・・・は?


さっきからこの人は何を怒って
何が言いたいんだろう?

返事をすることすら馬鹿馬鹿しくて
無視を決め込むことにした

その事に益々苛立ったのか?
ピンヒールで床を鳴らしながら

ギャンギャン吠え続けるナンバー2が


「ギヤーーーーーっ」


凭れていた扉が勢いよく開いたことで
巻き込まれてサイドの壁へと吹っ飛んだ


「・・・っ」


突然のことに息を飲む私の目の前に
少し焦った顔をした理樹が立っていた


「琴」


差し出された手を躊躇いがちに掴むと


「キャッ」


強く引かれて腕の中に飛び込むことになった


「大丈夫か、何もされてないか」


「・・・っ」


「琴っ」


「・・・く、るしい、理樹」


「あ、あぁ、すまない」


痛いくらい抱きしめる理樹の腕が緩んだところで

周りがざわつき始めた


「大丈夫?理樹」


理樹の腕の中で聞こえたのは
ナンバー1のルリさんの声

ナンバー2は[若様]だったのに
ルリさんは名前呼びなの?

それに呼び捨てってどういうこと?

少しずつ沸き上がる苛立ちは


「琴がここに連れ込まれてた」


ルリさんに返事をした理樹の声が優しいことで益々膨れ上がった