「で?あんた若様の何?」
化粧室へと続く通路を歩きながら不意に振り返ったナンバー2は
さっきまでとは別人のような鋭い目を向けた
若様って・・・時代劇じゃあるまいし
とりあえず・・・
なんだか無性に腹が立って仕方がないんだから
話しかけないで!と言えるはずもなく
強く念じて
無視を決めた
「アンタさ」
背中に声も打つかったけれど
・・・ムカつく
その勢いのまま
トイレに入ると鍵をかけた
ハァ
出るのはため息ばかり
[朧月]ではあんなに美味し、
じゃない・・・
あんなに楽しかったのに
『巡回』と聞いた食後の予定が
まさか経営している高級クラブを数店巡ることだったなんて
全く予想もしていなかった
一軒目は余りの盛況振りに
ママとセキュリティの話をしただけで早々に切り上げ
二軒目は席に座ったものの
10分程度のセキュリティの報告だけで終わった
だから・・・
三軒目のココもそうだと思っていたのに
理樹の経営する店の中で一番規模の大きいらしいココは
キャストも錚々たるメンバーが揃っているらしい
だから?
今の私には関係ない
それに・・・
この店に入ってから
理樹はルリさんしか見ていない気がする
あーぁ
何度目か分からないため息を溢し
仕方なく扉を開くと
「・・・っ」
恐ろしい形相をしたナンバー2が
腕組みをして仁王立ちしていた