ラグの足が止まった。
 ぼけっと風景を眺めていた私はそのことに気付けず彼の背中に思い切りぶつかってしまった。

「っとと、ラグ?」
「仕事だ、傭兵さん」
「わかっている」

 ラグに言われてセリーンが私を庇うように前に進み出た。

「え?」

 二人が喋ったことにも驚いたが、草原の中から突然そいつらが姿を現し更に驚く。
 私達の行く先を阻むように立ちはだかったのは総勢5人の男達。
 皆長剣やナイフを手にし、私でも“ならず者”だと一発でわかる格好をしていた。
 武器屋にいた傭兵の男達と似た雰囲気はあるが、こちらの方が下品に見えるのはその下卑た笑いのせいだろうか。

「男一人に女が二人……運が悪かったな。金目のもん全部置いていけば命は助けてやるぜ」

 中心に立つひょろ長い顔をした30代半ばほどの男が偉そうに言う。
 ……どうやら、所謂「野盗」というやつらしい。

 でも私はそうとわかっても別段怖いとは思わなかった。
 得体の知れない昨日のようなモンスターの方がよっぽど恐ろしい。
 それに、前にいる二人がいれば大丈夫な気がしたのだ。

「断る」
「なんだと!?」

 セリーンの一言に男の顔から笑みが消える。
 そして彼女の全身を見回した後、今度は馬鹿にしたように鼻で笑った。

「お前は傭兵か? ふん、よほど自信があるようだな。だが俺たちはそんじょそこらの賊とは違うぜ。なんたって俺様はあのストレッタ出身の魔導術士なんだからな!」