「セリーンでいい」
「え? そ、そうですか? ……じゃ、じゃぁ、セリーンは、いつから傭兵をやってるんですか?」
「登録したのは14の時だ」

 真顔だがそれでも目を見て答えてくれた彼女に嬉しくなって私は更に続ける。

「14!? すごい、中2の頃から!?」
「ちゅうに? なんだ、それは?」
「あ、や、私の地元の言葉で……小さいって意味で、あははは! じゃあセリーンって子供のころから強かったんですね!」
「いや、その頃は失敗ばかりだったさ。死にかけたことも何度かある」
「はぁ~、大変だったんですね。……そ、そういえば、魔導大戦、でしたっけ? 生き残ったって、そんなにすごい戦いだったんですか?」

 その時初めて彼女の顔が変化した。目を大きくし、驚いているみたいだ。

「知らないのか?」
「え? あ、その……」

 焦る。どうやらこの世界での常識だったみたいだ。
 その時ラグの舌打ちが聞こえた気がした。

「こいつはド田舎の出身でな、相当な世間知らずなんだ。お前も恥かくだけなんだからもう黙ってろ」

 その言い草に少し腹は立ったが、本当に余計なことは言わないほうがいいかもしれない。――と、

「あの戦いは……酷かったな」

セリーンがぽつりと呟くように言った。

「知らないのなら、その方がいい。私は生き残ったと言っても、ただ運が良かっただけだ」

 ……どちらにしても訊いてはいけなかった事だったのかもしれない。

 彼女のその寂しげな声音を聞いて、そう思った。
 それから私はラグの言うとおりにただ黙々と歩き続けた。



 風景は相変わらず平和そのもので、本当に傭兵を雇う意味があるのかと疑問に思い始めた頃、そいつらは現れた。