「お前、さっきこの女がどうとか言っていたな」

 ラグのすぐ隣に立たされた私を見て、カルダの表情が強張る。

「こいつはオレの連れでな、調査の助手にとストレッタから連れてきたんだ。こいつが、その特殊な力を持っている」

(えぇ!?)

 まさかの展開に私は内心焦る。
 でもそんなハッタリもカルダには効果抜群だったらしく、その顔が面白いほどに青ざめていた。
 私は動揺を隠し、ラグのハッタリに合わせて思いっきりカルダを睨みつけた。

「で、教えてくれたそうだ。農園の草木が最後の力で、誰が、自分達に火をつけたのかを、な」

 まっすぐにカルダを睨み見ながら小声で「そうだな?」と訊かれ、私は大きく頷く。
 そしてこれまでの憤りを全てぶつけるように、カルダに向かいビシっと指を突きつけた。

「あなたが、あの農園に火をつけた!!」
「ぐぅっ」

 小さく呻きその場から一歩後退ったカルダが後ろにいた男とぶつかる。
 それだけのことで後ろの男はバランスを崩し床に倒れこんだ。男は顔面蒼白。立ちあがろうともせずに、ただこちらを見上げている。

 ラグの詰問はまだ終わりではなかった。

「それともう一つ。……お前、昨夜こいつに何をしたか、覚えてないわけねぇよな?」

 カルダの顔に再び動揺が走る。
 それを見てか、ラグが口の端を上げた。

「――ストレッタの人間に手を出すなんざ、いい度胸してるじゃねぇか」

 その言葉が止めとなったのか、カルダがその場にがくんと膝を付いた。
 顔を伏せ、力無く肩を下ろしたその姿はとても小さく見えた。

(これで、終わった?)

 そう思った。
 だが、カルダはまだ観念したわけではなかった。

「ストレッタがなんだってんだ……」

 小さく聞こえたそんな声。
 そして次の瞬間、こちらを見上げたカルダの凄まじい憤怒の形相に私はビクリと肩を竦めた。

「魔導術士がなんだってんだ!!」

 そんな怒声と共に再び立ち上がった彼の手には、いつの間にかナイフが握られていた。
 ラグは私を後ろに突き飛ばし、すぐさま腰のナイフに手をかける。

「ラグ!」

 セリーンに受け止められた私は思わず悲鳴を上げる。