放課後、図書室。

 司書の人から、借りた本を紛失した場合は基本的に弁償してもらうという話を聞いた。

 ただし今回のケースは盗難の可能性があることを考慮して弁償までしなくていいとのことだ。
 もちろん本をずっと机に入れっぱなしにしていた仁瀬くんにも責任はあるので、その点を注意しておくように言われた。

 ……注意しておくように?

「わたしからですか」
「ええ」
「なんで!?」
「友達なんでしょう?」
「違います」
「そう? でもまあ、急いでないし。会ったときに伝えておいて」

 適当すぎる。
 適当という言葉は嫌いじゃないが、これでいいのか本当に?

「会いません。校舎ちがうので」
「集会とか下足場では?」

 わたしから声をかけろと?
 やなこった。
 もはや図書委員の仕事の範疇を超えている。

「……担任から伝えてもらえませんか」
「それでもいいけど」
「それでお願いします!」
「その必要は、ないみたいね?」

 クスッと笑う、司書さん。
 なぜ?

「そんなに僕に会いたくないんだ」
 …………!

 振り返ると、そこにいたのは――
「傷つくなあ」

 仁瀬巧だった。