「…うそつき」
「なにが」
とぼけたってムダだよ。私の目はごまかせないからね。
緩んだ口元、隠し切れてない。私のドキドキを返して、眺。
「…ニヤニヤしてる。余裕まみれじゃん」
「…それは、」
眺は少しだけ口ごもったけど、
「やっぱナイショ」
そう言ったきり、前を向いて真面目な顔つきになった。
でも私は、もう式に集中なんかできなかった。噓だってわかっても、顔にこもった熱は逃げてくれなくて。
…ズルい。言いたいことだけ言って、あとは「自分は知りません」って言うみたいに涼しい顔してるなんて。
余裕ないのは、私ばっかり。
…悔しい。
『──僕はこの高校生活をよりよいものにするために、友人やクラスメイトたちと協力して生活していきたいです。新入生代表、関根雨月』
──パチパチパチパチ…
新入生代表あいさつが終わった、ということは、入学式は半分以上終わったということ。
もう少し頑張れば、また礼奈ちゃんと話せる…!
そう思った私は、ちょっとだけ、「残りもがんばろう」と思えたのだった。