side 逢坂 湊
「はぁ、」
湯船に浸かりながら俺は、この数十分で何度目か分からない溜息をついた。
原因は、もちろん夏希さんだ。
さっきもお風呂上がりで、濡れた髪に、俺の家でも変わらずキャミソールにショートパンツという部屋着スタイル。おまけに、あの至近距離。好きな女がそんな無防備な格好しているのに、理性を保てと言う方が無理な話だ。
鈍感な夏希には、分かりやすくアプローチした方がいいと思っていたが、あの格好で部屋をうろつかれると、それどころじゃない。その結果、理性を保つ事で必死な俺は、夏希さんと距離をとってしまっている。
「どうするかな、」
夏希さんに触れてしまえば、きっと傷付けてしまう。
──『湊は、わたしの嫌がる事しないでしょ?』
和真の家で、夏希さんに言われた言葉。変に信頼されているのだ。そして、その信頼を俺は壊したくない。
でも、俺が距離をとっている間に、夏希さんが他の男を好きになったら?そんなの耐えられるわけがない。
もう、嫌なんだ。夏希さんが他の男の前で、幸せそうに笑っているのを見るのは。
ちゃんと、夏希さんと話そう。せめて、俺の気持ちが本気だって事を夏希さんに分かってもらわらければ。
俺は、そう思い浴室を後にした。