「お風呂ありがとう。って、何してるの?」
わたしは、服を着て、濡れた髪を拭きながらリビングに入ると、湊が、ノートパソコンのキーボードを打っていた。
「卒論ですよ」
「へぇ、って、もう終わるんじゃないの?これ」
わたしは、湊に近寄りノートパソコンを覗き込んだ。
「早くから始めてたんで」
「わたしなんてこの時期、まだテーマしか決めてなかったのに。そのせいで、最後の方は徹夜だったけど」
「夏希さんらし、、っ!」
それまでノートパソコンの画面にあった湊の視線が、わたしに向いたと思ったら、湊は、急にわたしと距離をとった。
「どうしたの?」
「っ、いえ。俺もお風呂入って来ますね」
湊はそう言うと、リビングから慌てて出て行った。
「はぁ、」
そう、これなのだ。
わたしが湊の家に来たその日の夜から、妙に距離を感じる。何かしたかな?告白の返事してないから嫌になったとか?
ああやって距離を取られると、少し寂しいなと感じる自分がいて、びっくりした。