「ご飯食べ終わったら、部屋案内しますね」
「ありがとう。っていうか、こんな凄いマンションに住んでる湊は、何者なわけ?」
「何者って。普通の人間ですよ。ただ、親がお金持ってるだけです」
「へぇ、そうなんだ。でも、こんな広い家で1人って、寂しくないの?」
「別に。元々、実家に居ても親は仕事でほとんどいなかったんで」
そう言うと、夏希さんは、悲しそうな顔をした。
いない事が当たり前だったから、寂しいなんて思った事がなかった。
こんな顔させるつもりじゃなかったんだけどな。
「夏希さ、」
「大丈夫だよ。わたしがいるし、もう1人じゃないよ?寂しくさせないから」
「っ、」
「和真の家にいる時、毎日うるさいって言われてたし」
夏希さんは、こういう人だった。
ずっと傍にいるから寂しくないよって意味に捉えた俺が馬鹿だった。
自分がうるさいから、賑やかで寂しくないよって事か。いちいち夏希さんの言葉を真に受けた方が負けだ。夏希さんは、無意識に人を煽る癖がある。
「はぁ」
俺は溜息をつき、頭を抱えた。