「湊?」
「っ、夏希さんは、座って待っててください」
赤くなった顔を悟られたくない俺は、夏希さんをリビングのソファへと誘導する。
「わたしも手伝うよ」
「いいです。夏希さん料理出来ないでしょ?」
「その情報、和真でしょ!?」
「これ、テレビのリモコンです」
和真の文句をグチグチ言っている夏希さんを無視して、テレビのリモコンを手渡す。
「出来たら呼ぶんで、それまでゆっくりしててください」
「仕方ないわね」
俺はキッチンに戻り、材料を冷蔵庫から取り出す。
チラッとリビングを見れば、夏希さんはテレビを見ていて、時々笑っている。
夏希さんが、自分の家にいる事が不思議だ。
数ヶ月前の俺には、全く想像もつかなかった。
夏希さんには、申し訳ないが別れてくれて嬉しいのが本音だ。