「この公園は、河川敷まで続くサイクルロードがあって…行きましょうか。景色が、綺麗ですよ。運動は?」

「まぁ、得意な方だと思います。」

嘘だけど。

何の嘘か、分からないけれど。

自転車だ、特に問題ないだろう。

「OK、じゃあ僕がストーカーで、雅実はキャプテンね。」

「ストーカー?」

「はは、その意味ではなく。前へどうぞ。先に座って。僕は後ろ。」

おお、乗る順番か。

え、待って?前?

後ろから見たいのに。

背筋…

彼がロードバイクを支えてくれているうちに、跨がった。

いや、結構…近い。後ろの席と…近…

「せーの。」

そう言われて慌てて漕いだ。

何だよ、せーのって。

可愛いじゃないか。

わっ。

最初はよろけたものの、前へ進み出す。

一度足を離して漕ぎ出すと、感覚を掴めるようになった。

自転車なんて久しぶりだな。

「何で自転車なの?」

0に聞いたつもりだったのに、彼が答えた。

「景色を変えて話せるから。それに、身体を動かしながらだと…あまり…」

「何ですか?」

「腹が立たないかなって。僕に。」

「…何それ。」