「ゆとりだよね」



「ゆとり…ですか?」



「それこそ自由恋愛なら、雰囲気とか話し方とか…色んな要素がプラスに働いてくれて、心が動くだろ?データでは分からない。マッチングでは“身長170センチ以上”って検索したら169.9の人は上がってこない。だけど、自由恋愛ならその人の事を死ぬほど好きになるかもしれないって事だ」



ワインを口に運び一息つくと



「俺で言うと“Dカップ以上”が検索条件なのに、自由恋愛なら……」



「香川さん、分かったから、もういいから」



胸フェチかい。



「あれ、ここからが良いところなのに?」



「イメージ崩れるから止めて下さい。でも、だからマッチング中の私ともお会いになったんですね?」



「そういうこと!その男性も寛大だね」



「それで駄目になるなら、成婚なんて出来ないって…」



「うん、これで“駄目にならない”でしょ!?結婚前に納得行くまで、心残りは…良くないよ」



「香川さん、ありがとうございました」



「うん、ワイン飲んで、美味しいよ。今度は彼と来るといい」



「はい」





「俺は成婚に、繋がる事だけが意味があるとは思わない。君との時間も貴重で……うーん……楽しい」



「私もです」



「じゃあ、もう一度」

そう言ってグラスを合わせた。





「幸せな、結婚に。それから、こんな日に」





話しやすくてスマートで…



“超”が、つくイケメンさん。

とても楽しい時間だった。





だけど……

香川さんとの帰り道…





私は無性に田中さんに、会いたくなった。