土曜の夕方、浴衣姿を期待していたのに、ワンピースに身を包み、薄い可愛らしいメイクを施した彼女がいた。

「なんだ、浴衣じゃないの?」

がっかりして肩を落とす俺に
「お疲れ様。
うん、ちょっと気持ち悪くて」

とすまなそうに歩が小さくうつ向いた。

「具合悪いのか?
無理して来なくても…」

「大丈夫」

にっこり笑い、俺の言葉を遮った。

「無理するなよ?」

手を繋ぐ俺たちに背後から声がかかる。

振り向くと、

「お疲れ、坂口。
花火より注目されてんな、お前たち」

可愛く浴衣に身を包んだ奥さんをつれた晒名が立っていた。

「こんばんは、百瀬さん」

「こんばん…あっ!
手術してくれた先生!」

「そっ。
こいつに君の居場所を密告した守秘義務違反の医者。
晒名虎太朗。
隣にいるのが奥さんの葵。」

葵ちゃんがペコリと頭を下げた。