結局、連絡先の交換は智大が許可しないまま、藍里、智大、吉嶺の並びで公園をゆっくり歩くことになった。
ふと吉嶺が不意に藍里の腹部に視線を移したのに気付いて、藍里は首を傾げる。

「それにしても……藍里さんが細すぎて、ご懐妊してるようにはまだ見えませんね」

「あ……そうですね……まだお腹も膨らんでないですし……」

言われてそっとお腹を撫でてみるがペタンとしていて、本当にここに赤ちゃんがいるのかと自分でも疑ってしまうくらいだ。
そのまま黙りこんでしまった藍里に、吉嶺は少し何か考えるとにこっと笑顔を向けてきた。

「大きなお腹のマタニティウェア姿の藍里さんもきっと可愛いんでしょうね。勿論、何でも似合うと思うんですけど、やっぱり俺としてはこう、胸の下辺りで絞られたワンピースが……」

「黙れ変態」

吉嶺の言葉を途中で止めた智大はすこぶる不機嫌で、絶対零度とも言えるような眼差しを吉嶺に向けていた。

丁度公園の出口に差し掛かっていたのもあり、身の危険を感じたのか吉嶺は空笑いをするとそのまま去って行く。
智大は心底呆れたとでも言うように深い溜め息を吐いていた。

「あいつはいつになったら藍里を諦めるんだ」

そんな呟きに答えられない藍里が苦笑していると智大が無言で見下ろしてきたので、藍里は首を傾げながら智大を見上げた。