やってきたのは通勤途中によく通る家からも程近い公園で、藍里は智大と手を繋ぎながらゆっくりと歩いていた。

そして、そこは吉嶺とよく遭遇する場所でもある。
案の定パトロール中らしい吉嶺が満面の笑みで駆け寄ってくるのに苦笑し、智大は眉を潜めて見ていた。

「藍里さんっ!偶然ですねっ!」

「何が偶然だ。公園の外の信号の向こう側から走ってくるの見えてたぞ」

藍里を背中に隠すようにして立った智大は呆れた視線を吉嶺に投げかけるが、吉嶺は全く気にした様子もなく体を傾けて藍里の姿を覗きこんだ。

「こんにちは、藍里さん。体調はいかがですか?」

「こ、こんにちは……。体調は、今日は良い方です……」

「それは良かったです。あ、もし一人で出歩いている時に体調崩されたらアレなんで、良かったら連絡先お教えしますよ。
休みでも職務中でも何か事件が起きた時でも、藍里さん優先で駆けつけます」

「え?いえ、それは……」

「……真面目に仕事しろよ警察官」

智大の腕が腰に回り、ぐいっと体の向きを変えられたかと思うと胸板に顔を押し付けられた。
その動作に不満だったのか吉嶺は、市民の体調を守るのも警察官の仕事です。と言い出し、そんな仕事聞いたことない。と智大が反論していた。

休日だけあって小さな公園は人も多く、吉嶺と智大の言い合いは目立っていて、擦れ違う人がクスクスと笑いながら歩いていくのを聞いて藍里は恥ずかしさのあまりどうにかなってしまいそうだった。