「妊娠中は悪阻もあって不安になりやすいから、お前がしっかり嫁さん支えろって言われた。だから残業して仕事引き継いで、有り余ってる有給使って暫く休むことにした」

「え……?」

いつも言葉が少なめな智大だけど、今回はさらに要点だけをかいつまんで話され、何を言っているのか一瞬分からなかった。
智大が妊娠した藍里を支えるために暫く仕事を休む。……そう言ったような気がした藍里は目を丸くすると、震える手でギュッと智大の服を掴んだ。

「お、お休み?」

「ああ」

「家にいてくれるの?」

「ああ」

「ずっと一緒……?」

「休みの間はな」

最長で一ヶ月。
それが今回智大がもぎ取った休みで、残りの有給は藍里の出産後に使うために残しているらしい。

「さすがに緊急出動がかかれば、有給だろうがなんだろうが駆けつけないといけないけどな。それまでは傍にいてやれるから、好きなだけ寝て好きなだけ甘えてろ」

「っ……うん……!」

休職し、暫く一人きりで寂しい思いをしながら悪阻に耐えないといけないと思っていた藍里は思ってもいなかったことに喜び、再び涙を流した。
そんな藍里に苦笑しながら、智大は何度も藍里の涙を拭うのだった。