智大が買い物に行っている間に目を閉じていたらいつの間にか眠っていたらしく、起こされた時には家に着いていた。

寝起きでぼんやりしていたら智大が風呂掃除をしたり洗濯物を取り込んだりと、普段は藍里がやらないといけないことを何も言わずに全てやってしまった。

やっと藍里の頭がハッキリしたのは、用意された一番風呂に入った時だった。
よく入れる入浴剤が入っていないのは匂いに敏感になり始めた藍里への気遣いなのだろうと察すると、藍里はまたも無性に泣きたくなってしまって慌てて風呂から出た。

「智君……!」

「藍里?」

風呂から出て、髪を拭くのも適当に早足でキッチンへ行くと料理中の智大の背中へと抱きついた。
智大は多少驚いたようだったが火や包丁を使っていなかったからか、藍里の行動を咎めることはなかった。

「どうした?」

「あの……あのね、私がやらないといけないのに色々やってくれてありがとう。お風呂も、入浴剤入れなかったり寝てるの起こさなかったり……私のこと考えてくれてありがとう……!」

ぎゅうっと抱きつきながら言うと、智大は何も言わずに体の向きを変えて抱き返してきた。
智大が動くその少しの間に、今盛り付けていたのであろう藍里が食べきれる量の小さく切られた果物が見えて、また泣きたくなってしまった。