夕方過ぎになると藍里は動物の独特の匂いに気持ち悪くなってしまい、動くことが出来ずに休憩室で休んでいた。
帰りたくても帰れない現状にどうしようかと途方にくれていると、受付にいた先輩が笑顔で休憩室に入ってきた。

「小蔦、お迎えよ」

「お、迎え……?」

椅子に座り、机に突っ伏した状態でのろのろと青白い顔をほんの少しだけ上げる。
誰にも連絡を入れていない藍里は何のことかと疑問に思ったが、先輩のすぐ後に入ってきた人物を見て驚いた。

「智君……?」

藍里の驚きを余所に智大は藍里の隣の椅子に置いてあった荷物を手に取ると、今日から休職に入ることなどを先輩に説明されていた。
そして先輩が、たまには顔見せに来なさいね。と藍里に言ってから休憩室を出ていくと、智大は藍里の顔を見るためにその場にしゃがみこんだ。

「大分顔色が悪いな……駐車場まで動けるか?」

「が……頑張る……。けど……あの、どうしてここにいるの……?」

ゆっくり立ち上がり、支えてもらいながら藍里が智大に疑問を投げ掛ける。
普段夕方が定時の時でも殆ど残業などできっちりと帰ってくることがなかったので何かあったのかと心配になってしまった。

ふらつく藍里の肩を抱いた智大は、後でゆっくり話す。と言うと、藍里に合わせて少しずつ歩を進めた。