「それはおそらく悪阻の一種ですね」

「悪阻……」

朝食を食べた後に藍里は妊婦検診にやってきた。
気持ち悪くなる回数が増えてきたこと、眠くて仕方なく起きれないことが増えたことを相談すると、医師からそう言われて驚きに目を丸くしていた。

「酷い時は寝ても寝ても眠気がなくならなくて、一日中寝ているという方もいますよ」

「い、一日中……!?」

それは困る。と慌てた藍里が対処法を聞くが、医師は緩やかに首を振った。

「悪阻は赤ちゃんからのママへのサインだと言われることもあります。食べ悪阻はお腹がすいた、眠り悪阻は一緒に寝よう、です。
これから悪阻が酷くなる時もあるでしょうから、その時は赤ちゃんがママへ語りかけてると思って安静にしてください」

「赤ちゃんからのサイン……」

「無理をしないことが一番です。あと、妊娠するとどうしても精神的に不安定になることが多いので、辛い時はパパに頼りましょうね」

そう言いながらにこやかに医師から一枚のエコー写真を差し出され、藍里は両手でそっと受け取った。

そこには小さいながらもしっかりと人間のような姿になった赤ちゃんが写っていて、藍里は何故だか無性に泣きたくなった。