「あの……今日、本当に何もやってなくて……急いでやらないといけないんだけど、でも……」

「でも?」

「もう少しだけ……このままでいてもいい、かな……?」

何も言われないことを良いことに、藍里はさらに密着しようと体を寄せた。
離されないことに安心した藍里は、思いきってギュッと抱きついてみる。

「……ずっとこうしてたいな……」

無意識に呟いた言葉に驚いた智大は揺れる藍里の瞳を見るとそっと抱きしめてくれて、藍里はゆっくり目を閉じた。

「何かあったのか?」

「何もないの……ただ、夜中に気持ち悪くなって何度か起きて……その度に隣を確認するけど智君がいなくて、それが寂しくて……」

言いながら、途中で恥ずかしいことを言っていることに気付いた藍里は智大から離れて両手で赤くなった顔を隠した。
けれどすぐに智大が藍里の手を掴んで顔から退けさせたので、潤んでしまった瞳で戸惑いながら智大を見上げると、智大は笑みを浮かべていた。

「甘えたかったのか」

「あ、まえ……?」

「俺がいなくて寂しかった、だから今甘えてるんだろ?」

「そう、なのかな……?」

「そういうことにして、もっと甘えとけ。全部受け止めてやるから」

それにしても、本当に俺の服着てるんだな。と肩を揺らして笑いながら言ったのを聞こえないふりをして、藍里は戸惑いながら智大の胸板に無言で顔を埋めるのだった。