智大が夜勤で帰ってこない夜は寂しくて不安で、寝付きが悪くなってしまったのは何時からだっただろうか。
それまでは智大がいない時こそ、初めて藍里は家の中で自由でいられて、心から安心していたというのに。

随分な変わりようだと自分でも呆れてしまうが、それが智大のことを好きになれた心の変化なのだと分かっているから甘んじて受け入れられた。

風呂に入り、一人分の少量のご飯を時間をかけてゆっくり食べると後の一人の時間を持て余す。
テレビをつけて、特別大きなニュースがないことを確認するとすぐに消した。

暫くボーッとしてから時計を見て、徐に立ち上がると藍里は階段を上がり寝室に向かった。
クローゼットを開け、目的の物である智大の部屋着を手に取るといそいそと身につける。

小柄な藍里の体型に対して体格の良い智大の服はブカブカすぎて肩からずり落ちそうになるけれど、藍里はそんなことを気にせずに微かに香る智大の匂いに頬を緩めた。

「……早く帰ってこないかな……」

これも今までなら決して思うことのなかった感情で、離れたくて仕方なかった智大のことを好きで仕方なくなってからは一時も離れたくなくなってしまっていた。

「本当に、不思議……」

一人では広すぎるベッドに乗り、いつも智大が休んでいる場所に寝転がると、そこからもふわっと残り香がした。
ドキッと胸を高鳴らせつつ、藍里は毛布を顔の半分まで被るとそのまま目を瞑った。

明日、早く智大が帰ってきますようにと願いながら。