「主、人……は……色々な人に言い回ってるんですか……?」

恥ずかしくて、両手の隙間から潤んだ瞳を覗かせながら怖々と藍里が入江に聞くと、入江は慌てて首を振った。

「ち、違います、誤解ですっ!先輩はそんなことされてませんっ!無闇に話回ってる訳じゃないんですよ!」

「そ、そうなんですか……?」

良かった……。と藍里は安堵の息をもらした。
それから入江は簡単に報告義務の話をしてくれた。

智大達が所属している特殊班は結婚や離婚は勿論、妊娠が判明した場合も速やかに報告する義務があるらしい。

配偶者が何かしらの事件に巻き込まれたり、悪事に利用されたりするのを防ぐ為に護衛しやすくしたり、救出しやすくする為だと。
そして本人やその家族、親戚は勿論のこと、婚約を決意した相手に犯罪歴などの問題がないかも極秘に調査されるらしい。

「も、もしかして私も……」

「恐らく先輩が見合いをすると報告したその時点で、調査員に調べ尽くされていたかと」

「わ……あ……」

それはどこまで調べられていたのか。
もしかしたら智大との今までのこと全て調べられていたのかとか、藍里は他人に知られたくないことが多すぎてどこかに隠れてしまいたい気持ちになっていた。