「あいちゃん、おめでとう!」

「……あ、りがとう……ございます?」

次の日、職場のトリミングサロンの受付に立っていたらマルを連れた圭介に開口一番、満面の笑顔でお祝いされた。
あまりに突然で何度か瞬きして首を傾げていると、圭介は笑顔のまま口を開いた。

「昨日智大から聞いたんだけど、赤ちゃん出来たんでしょ?うちの両親すっごく喜んで、あいちゃんのお母さんも来て、みんなで酒盛り始めちゃって……もう大騒ぎ!」

「ええ……っ!?」

昨日の智大は藍里が妊娠を報告した後、お風呂と食事以外ずっとくっついてはお腹に手を当てていたはずだった。
それなのに一体いつ連絡したのかと驚いていると、圭介は笑みを崩さないまま続けた。

「智大、滅多に家に電話なんかしてこないのに……よっぽど嬉しかったんだろうねぇ」

「も、もうそれくらいにしてください……」

喜んでくれるのは嬉しいけれど、なんだかとても恥ずかしい。
藍里が真っ赤になった頬を両手で押さえて俯くと、圭介は目を細めた。

「あいちゃん、素直になれなかった弟を見捨てないで……しかも受け入れてくれて本当にありがとう」

その言葉に藍里がほんの少しだけ顔を上げると眉を下げて頷き、そして微笑んだ。