そうして始まった秋鳴との微妙な関係


俺の彼女な、なんてあの時は言われたけど

別にそういうつもりで慰めてって言ったわけじゃなかったし

そもそも秋鳴は私の好みじゃない
客観的に見て格好いい顔をしてるとは思うけど


今は手持ちぶさたで寂しいだけから
とりあえず話し相手になってもらってる



「え、嘘でしょ
なんでそんなに上手いの秋鳴」

「お前が下手なだけ
こんくらい普通」


手際よく材料を用意して調理を始める秋鳴

私はその隣で秋鳴のフライパンさばきを見て
感嘆の声をあげる


いやいや、明らかに料理の腕前が一般人とは違う


秋鳴は母子家庭って事もあって
家事全般得意だとはひなから聞いてたけど


実際目のあたりにすると
自分の女子力の低さを認識させられ
地味にダメージを受ける




「わ~!お店で見るやつだ~!
すごーい!」


シンプルなデザインの白いお皿
その上に

綺麗な焼き色のついたパンケーキ

焼き加減絶妙

ふわっふわな出来映え

仕上げに蜂蜜をたっぷりかけて
生クリームを添える


「きゃ~!さいっこう!」

「そーかよ」

「何とか来週までにこのクオリティを身に付けないと…」


お店で出されるものと大差ない秋鳴のパンケーキ
その隣に歪な形をしたパンケーキがある

お世辞にも美味しそうとは言えないそれは私作


秋鳴に言われた通りにメモしたレシピを見返して
うーんと唸る



「別にこれじゃなくてもいいだろ」

「だめ。ひなが秋鳴の作るパンケーキが
食べたいって言うんだもん」

「どうしても食べたいってんなら作ってやるけど」

「だめ。私が作ってあげるの」

「ひなが食いてーのは俺が作ったやつなんだろ」

「いいの!」