声が震える


ここは大学の廊下で
人もそれなりに行き交ってる

今、泣くわけにはいかない


ぐっと唇を噛み締める



「!」



ばさりと頭の上に何かが被さって
かと思えば力強い腕に引っ張られる


「…秋鳴?」


頭の上に被さったのはさっきまで秋鳴が羽織ってた上着


秋鳴の腕の中におさまった私は
その上着の下からそっと秋鳴を見上げた


「まだ好きだから
複雑だったんだろ」

「…」


秋鳴が被せた上着で周囲には私の顔は見えてなかったけど

それでも秋鳴は
私の姿が他の人に見えないように

秋鳴の陰で隠れるように抱き締めている


「別にその感情を抑えろなんて
誰も言ってねーよ」

「…でも、気持ちが、ぐちゃぐちゃになって…」


自分が嫌だと思った

もう終わったことなのに

一回、それもほんの一瞬会っただけなのに
一喜一憂して

そんな感情に振り回されるのも