「惚れてるやつは別なやつに惚れてた
それだけだ」

「…それは…辛いね…」

「別に
向こうが幸せならそれでいいと思ってたし」

「…。秋鳴はすごいね
私は…そうは思えないや」



好きな人の…
冬馬の幸せを喜べなかった


隣にいるのは何で自分じゃないんだろって
そればっかり
元カノに嫉妬ばっかりしてた


本当に好きなら
その人の幸せを願えるはずなのに


「…」

「つづり」

「!…ひゃにすんの」


拭きかけのお皿を持ったまま
項垂れ黙りこむ私の顔を両手で上向かせ
むにゅりとほっぺたをつねる秋鳴

痛くはないけど喋りずらい


「余計なこと考えてねーで
お前はあほみたいに笑っとけ」

「…ほれは、へがおつくってるふもり?」

「何言ってんのかわかんねーよ」


噴き出す秋鳴につられ
私も小さく笑う


…ほら
やっぱり秋鳴は優しい