Side.I



「ファンタジー小説、これより先の展開ある?」


『そもそもそんなもの作ってないからあるわけないねー、って言えたらよかったねー。』

「えっ!てことはあったの?樹詩!!ちょっと詳しく教えてよ!!!」



目の前でピコピコと長い耳を動かして俺の名前を呼ぶのは俺の親友である、百鬼紫苑(なきり しおん)。いや、耳は生えてないけど。うさぎの耳が幻覚で見えるほどに小動物系の男子である。

まぁ、あくまでも系統なだけであって実際は肉食獣じゃね?その強さ、みたいな。


『だから、ファンタジー小説書いてねぇし。進展……っていうか、まぁ、うーん。』

「ハッキリしないなぁ。」


頭を掻く俺に対して、身を乗り出して目をきらきらさせる。紫苑とは元々家が近く小学校と中学校が一緒だった。


偶然高校まで一緒で、本当に偶然俺のミスでノートを落とし、それをきっかけに仲良くなった。そのノートの中身というのが問題で、小学六年生の頃だったと思う。

前世と言う概念をあの頃の自分が知っていたかどうかは忘れたけれど、何故か不思議に思っていて気持ちの整理をつけるためだったと思う。