「それとさっき樹詩くんが言っていた話……なぜ君を婚約者にしたかという疑問についてだけど。

さっき僕は色んな本を読んで情報を集めたと言ったね?そこで見たんだ。とある記録を。」


『とある、記録、ですか。』

首を傾げる俺を見てひとつ頷いた桜我さんは申し訳なさそうな顔になる。この人はコロコロ表情が変わるな。前世では見ることが出来なかった。

「ああ。あくまでも仮説なんだけれどね、同じ前世持ちの人が何人も集まったら、誰かの後悔によって繰り返されているかもしれないらしい。

再現された、とでも言うのか。」


『誰かによって引き起こされた……、』

「うん。それが僕は、僕自身の後悔じゃないかと思っている。」

『え?』

「君が死ぬ原因となったあの戦争……結局君はあの戦争で死んでしまい結婚の約束を陽芽としていたにも関わらずできなくなってしまった。

君が勝ってくれたから僕達は平和になったけれど、指示を出したのは僕だからね。ずっと後悔していたんだ。

陽芽と樹詩くんを結婚させてあげたかった、と。きっと今世はそんな僕の後悔から生まれたものじゃないかな。」



あまり長く話していると陽芽に怒られるからね、と言って笑いながら内緒話だと言うように肩をすくめる。

「陽芽は記憶を持ってはいないけれど、生まれ変わりだ。そして多分、君の両親も。あと他にも何人かいるはずだよ。」


付け足しをした桜我さんは陽芽たちの元へと戻ろうか、と言いながら俺を促す。




陽芽は生まれ変わりだよ、と告げた桜我さんの声がホテルから家へと帰るまでずっと脳内を回っていた。