『え、?えっと、何を言っているんですか?』


「違ったかな?ちなみに僕はあるよ。

物心着いた時から断片的に見ていた。前世と言う概念を知ってからは、理解できなかったものがストンと胸に落ちた気がして、だけと信じられなくて調べたんだ。

その結果、文献で読んだ気がしてね。君の瞳は茶色だと言われていた。なのに俺の目には青色に見える。

これはなにかのサインなのかもしれない、ってね。だっておかしいじゃないか。僕に色彩異常はないんだ。

だから、聞いてみたくてね。」



そう言われて理解した。でも、もし本当にこの人が前世の記憶を持っていたとしても同じ記憶を共有しているかなんて分からない。


『持って、ます。俺はフォルテス王国という国の姫の護衛騎士でした。

名前は、イツシ。今と変わりませんが、苗字はありませんでした。』



「やっぱり、読みが当たっていたね。

先に自己紹介をしてもらった形になって申し訳ない。僕はフォルテス王国、国王、オウガ・ブライアースだ。

今世でもよろしくね、イツシ。」


胸がドクンと音を立てる。間違いなくその名前と国名は俺がいた国の国王であることを証明している。

本能的に跪いて挨拶をしようとした俺を、桜我さんは止めた。


「いいんだ。今世では婚約者のお父さんだから。そう思って接してくれ。もう、イツシが必要以上に僕を敬うことなんてしなくていいんだよ。桜我さん、とでも気軽に呼んでくれ。」

『分かりました。』