…はぁ?
助けたって、あの時の誰一人として私の事なんて心配してなかったじゃん。
水樹さんは私なんて眼中にありません。って感じで青木だけ助けて外出たじゃん。
「アンタ、何か習ってた?例えば合気道とか?」
唐突にそんな事を言う照彦。
「…いえ、特には」
「そう」
中学まではバレー部だったけどね。
「自分の身の安全が守れない以上、紅蓮連合で責任持ってアンタを守ってやるから安心しなさい」
いつものオネエ口調で、
「守ってやるって…」
そんな事言われたって不安でしかないから。
「だとよ、諦めろ」
秀虎は私の肩に手を置き同情をする。
「よろしくね沙織ちゃん」
笑顔の水樹さん。
「任せて頂戴」
タバコを消して私を見る照彦。
そしてー…
口角を上げて一人用の椅子に踏ん反りかえっている紅蓮連合総長。
私の返答を待たずして、私は紅蓮連合の姫二号へと迎え入れられた。
本当に強引過ぎて何も言えない。
「とりあえずアンタは松田に診てもらいなさい」
そう言って、いつか来たような松田がいる診察室に連れていかれた。
「入るわよ」
照彦は律儀にドアをノックし、扉を開けると中から、
「忙しいってのに…」
白衣を着た長身の黒髪男が沢山の書類が乗っかった机に忙しそうに目を通していた。
「悪いわね、こっちも急ぎではないんだけど。色々と事情があるのよ」
事情って何だよ…
「知るかよ」
…たしかに。
「冷たいわ〜」
照ちゃん悲しい、なんて戯言を言っている照彦を無視して松田は書類にしか目を向けない。
「さっさと出て行け。次から前もって言え」
しっしと出で捌けると、
「…わかったわ」
そう納得したのか扉に向かって歩き出す。
「邪魔したわね、松田。
次からは前もってアポ取るわ。
って事でこの子置いていくから」
「「…は?」」
松田と声が被る。
ちょっと待て照彦ぉぉ!!
何が「ってことで」よ!
どんな事よ!
照彦は光のごとく俊敏に扉から出ていった。
残された私は棒立ちで扉を見ることしか出来なかった。
佇むこと数秒、いや数分?
「おい」
「…っはい!」
突然話しかけられて驚き大きな声で返事をする。
「照彦の用事は何だったんだ」
頭をボリボリと掻きながら、書類を机の上に置きクルクルと回る椅子を回転させる。
そこで私と視線が合わさる。
「…何だったんでしょう」
私が聞きたいっつうの!
「…………」
「…………」
無言が辛い。
私も部屋から出よう、クルッと踵を返し照彦の後を追おうと扉に手を掛けると、
「座れ」
松田は診察台の上に乗っていたブランケットを取ると、そこへ座るように促す。
「さっさとしろ」
「…はい」
なんでそんなに偉そうなわけ?
なんてチキンな私は大口を叩けずにいた。
大人しく診察台に腰を掛けると、
「脱げ」
!?!?!?!?!?
急に制服のボタンに手をかける。
咄嗟にその手を掴むと、
「何勘違いしてんだ、診察するから脱げって意味だったんだけど」
意地悪そうに微笑む。
「俺は別にヤってもいいけど?」
「……っ!」
これが大人の男の余裕ってやつか!?
だって脱げって急に言われたら誰だってびっくりするじゃん!!