「最初は驚いた。夢でも見てるのか。って……俺もそっちに行ったのかって……でも、そのあと幸也から電話がかかってきて、そのふたつじゃないことが分かった。……分かって、遥に触れようとしたらその手は遥の体を通り過ぎた……」



「そんな手に……連れて帰るにも連れて帰えれないんだ。って思って意味もなく、パーカーを掛けて掃除して帰ったら……遥がベットに寝てて……地味にホラーで背筋がヒヤッとした。でも、また。遥がこの家にいることが嬉しくて、そんなことどうでもよかった。」




ホラーで。って言った彼方に笑いそうになるが彼方の目が真剣で、笑えなくなる。




「そして、暫くして目が覚めた遥はこの家の事も、俺の事も忘れてた。少し寂しかったけど。ここにいてくれる。そう思ったらそんなのどうでも良くなった。だって、思い出はまた作れるでしょ?」





そう言って私を見て微笑む。彼の手が私の頬に触れることが出来るなら……彼の手は私の頬に触れているかのようにそえる。




「触れられない。そう思いながらも遥の頬手を伸ばす。その手は空を切るだけだった。でも、遥から触れることは出来た……」



「うん。あの時はまだ、自分が生きてないこと……知らなかったもんね……」



「だな。このまま、気が付かなかったら良かったのに、そしたら……ずっとこのままここに居れたでしょ?」




なんて、つらそうに笑う彼はどこかで分かっている。気づいても、気づかなかったとしても……




【もうお別れだってこと。】