どれぐらい時間が過ぎたかなんてわかんない。
ただ分かるのは、夜に帰ってくると言ってた彼方が帰ってきて、私のいる場所に目を見開き驚いていた。
「許可とって。て、言ったじゃん……」
なんて笑えば彼は驚いた顔で見つめてくる。
「ごめんね。彼方……辛かったよね……なんで、忘れてたんだろうね……」
そう言って微笑めば彼は目を伏せる。
そしてまたつらそうな顔をする。
「ごめんね。彼方……」
そう言って頬に手を伸ばして触れようとすれば手は空を切るだけで触れることも出来ない。
「ごめんっ……自覚したから……触れることも出来ないや……彼方は……いつもこれでつらそうな顔をしてたんだね……」
そう言って顔を伏せる。彼方は手に手を重ねるようにそっと触れようとする。でも、その手に触れることはもうない。
それが辛くて、部屋の中にあった私の写真が飾られている机に目を向ける。机の上には私の写真と、私が好きだった紫のアネモネの花。
「私、あの時落ちて海に沈んだんだね……」
「………あの日、墓参りに行ったら……遥にそっくりな女性が墓の前で倒れてた……驚いて駆け寄ったら、そっくりどころか、本人だと思った。ほら、遥の首の後ろのホクロ……」
「やだ。ばっかじゃないの?」
なんて少し笑えば彼も釣られて笑った