この頃、頭が痛くなることが多々ある。
痛くなるのは決まって、テレビや雑誌、漫画や写真で海が映る時。それと、彼方さんが嬉しそうに微笑んでる時やかなしそうにわたしをみてるとき。
「彼方さん!歌ってくださいよ。この前うたってた【初めての恋が】なんちゃらって歌!」
「え、やだよ。」
「えー。どうして?」
「……その歌は、遥の方がうまいからだよ。」
「私、歌ったことないよ?だって初めてっ……」
【彼方!これきいてきいて!私が歌った!】
【ねぇ、彼方!!今度さー。一緒にうたおーよー!】
私知らない……なのに、頭痛に混じって流れる光景。私に似た女性が彼方さんに幸せそうにくっついて……彼方さんは少し迷惑そうにしながらも嬉しそうに微笑んでる光景……
「…っ…!?…っ!?遥っ!!」
「え……」
名前を呼ばれてハッと顔をあげれば心配そうに顔を歪ませた彼方さんの顔が映る。
「どうした……の?」
「え、あ、ごめん。大丈夫……」
そう言って笑う彼方さんの表情はどこか固く……とても不安そうで……私の体が勝手に動き。彼方さんを抱きしめていた。
「大丈夫。彼方さんはひとりじゃないよ?この前来てた友達も……仕事関係の人とかも。皆、彼方さんを必要としてる。」
なんでだろ。こんな言葉が……スルスルと出る……私……彼方さんのこと、あんまり知らないのに……
「1人だよ……」
「え?」
「1人だよ……俺は……1人だっ。」
なんて言って涙を流した彼に私はただそれを黙って見てることしか出来なかった。