私が彼方さんの家にお世話になるにあたっていくつか注意された。



まず。

廊下の玄関近くの右側の裏向けられたプレートがかけられている部屋には入ってはいけない。



彼方さんのお友達が来ている時はなるべく私が今使っている?借りてる?部屋から出ないこと。



家事をすると、破滅的な私が家事をしては行けない。


そのほか、色々。




と、決めた。



私が彼方さんの家に住み始めて早くも半月がたった。




時々、彼方さんは、裏向けられたプレートがかかってる部屋に入っていく。そして、出てくる時は必ず目が赤く……涙を流したあとがある。




だから、その部屋は彼方さんの大切な人の部屋なのかもしれない。




そして、ひとつ気がついた。
私が住んで半月、奥様は1度も帰ってこられない。それどころか連絡をとっているようにも思えない……



連絡ができない場所にいるのか……それとも、……いや、これは彼方さんの問題で、居候の私が踏み込んではいけない……




そう思いながらも。
時たま私を愛おしそうに見る彼方さんの顔を見て、見ぬ振りをして。そして、その度に私の胸が悲鳴をあげるように傷んだ。