私達は私のベットに座って天井を見ながら思い出を語っていた。




「ねぇ、彼方。私、記憶ない時どうだった?」



「どうって、本当は記憶あるんじゃない?って疑いたくなるぐらい普段通りだった……でも、俺をさん付けで呼ぶのは新鮮だったかな……」



「……彼方さんって初めてあった時から呼んだこと無かったね。そう言えば……」




呼ばれた記憶ないなんて、目を細め笑う彼方。そんな彼に笑いながらも目を見る。




「ねぇ、彼方……私の事、すき?」


「うん。この世で1番。愛してる。」


「……私も彼方のこと好き。大好き、愛してる。でもね、彼方……愛してるからこそ、私なんて忘れて幸せになって?そんで、私の墓の前で自慢話たくさん聞かせてよ。お前より大事に思うやつができたって。フェンスに寄りかかってフェンスと一緒に落ちたお前より愛してるやつができたって。」



「そんなこと……できるわけ」



「出来るよ。できる。私なんかより素敵な女性は沢山いる。だから、先にいった私が後悔するような……幸せな家庭を……つくって?」



目の前が滲んで何も見えない。さっきよりも体が重い。頭痛だってさっきよりも酷い。



「彼方。歌ってよ……なんでもいーからさ。」



「やだよ。遥の方が上手いじゃん。」


「いいじゃん。聞きたいんだもん。彼方の歌。」



「……分かった。ちゃんと聞けよ?」



なんて言う彼方の声はどこか震えていた。





『出会えて良かった キミが好き

ありがとう サヨナラ 一言が言えない
今だけでいい 私に勇気を……っ』



歌ってる彼方にそっと触れるだけのキスをした。そのキスは、ちゃんと触れた感覚があって……お互い目を見て微笑む。




ごめんね、彼方。ちゃんと目を見たかったけど……目がちゃんと見えなかった……



来世の今頃には、どんな私がいて。
どんな君がいるのかな……