来年の秋。まことは来なかった。
幾度月が巡っても、幾度秋が来ようともまこ
とがここに来ることはなかった。

18歳になった。
私は大学でできた友達と外国の美術館へ来て
いた。1ヶ月間滞在することになった。不思
議とまことを探していた。どこにいるのかす
らわからないのに。
一週間が経過しようとしていた。私は交通事
故をおこして病院で入院した。
「ごめんね。私のせいでいきたいお店見れな
くなっちゃって」
「全然大丈夫だよ~♪また行けばいいしね♪
私もう行くけど大丈夫?」
「うん。ありがとう。おやすみなさい。」
「おやすみ。」

目が覚めた。痛めた足をかばいながら自販機
へ向かう。先客がいるようだ。私のお母さん
ぐらいの女の人がいた。
「こんばんは」
「あぁ、こんばんは」
「今日は少し冷えますね。」
「もう秋になりますからね。少し話しましょう?」
「はい。」
「私にね、あなたくらいかしら?息子がいた
の。男の子なのに小柄で色白の体の弱い子だ
った。」
私の中にすっとまことが浮かんだが、そんな
わけがないと首を振った。
「そうなんですね。」
「えぇ。体が弱いから1年の春、夏、冬だけ
ここで過ごして、秋は日本で一週間過ごすの
。そしたらいつからか楽しそうに帰ってきて
、ある女の子の話をするようになったの。幸
せそうだった。」
「それで、その子はどうしたんですか?」
「その一週間の最後の日に魚のぬいぐるみを
持って帰ってきたんだけど、その子自身もう
体が弱りきってきたのね。帰ってきた途端に
倒れちゃったの。そしたらそのまま‥‥‥」
もしかしたら、もしかしたらまことかもしれ
ない。でも、そんな子この世にたくさんいる
。まことだけじゃない。でも‥‥
「名前は‥‥‥何て言う子だったんですか?」
「名前はまことって言うの。」
目の前が真っ暗になった。
ポタッーーーー
涙がこぼれる。とめどなく溢れる。自然とま
ことからもらったネックレスを強く握りしめ
ていた。
「その、そのまことが話していたある女の子
は私です。私なんです。」
「あぁ、そうだったのね。そうだったのね。

その夜、私たちは互いに肩を抱き合いながら
泣いた。