クラスの空気がざわつき始める。
その子は柚月から離れて、くるりとクラスのみんなの方に向き直った。
「えーーっと、如月 なずなです!
柚月くんの幼馴染なの。よろしくね!」

一瞬空気が静まって、またざわつき始める。
私は笑顔で、なずなちゃんに言った。
「よろしくね、えっと…なずなちゃん?でいいのかな?」
なずなちゃんは笑顔で、私に言った。
「うん!なずなでいいよー 名前…なんて言うの?」

その一言で、私はまだ自分が名乗ってなかったことを思い出した。
「あっ、ごめんね!私は星野 菜月。なっちゃんとか菜月って呼んでね。」

なずなは笑顔で頷いた。
それにしても…どうしてなずなはずっと柚月にくっついてるのかしら?

「えっと…如月、離れて。」
柚月が困ったように言うと、なずなは笑って言った。
「『なー』っての呼んでくれないの?」
なーという単語が、2人の世界観を作っている気がした。
雪菜が心配そうに私を見てくる。
私は曖昧に笑い返した。

「あのさ。俺、彼女いるから、そういうの迷惑。もう、なーとか呼ばないから。」
彼女…って、私のことよね?!
少し嬉しくなっている私に対して、なずなは表情が消えた。

「彼女…?」
「ああ。だから、お前とは…」
柚月の言葉を遮って言う。
「誰よ?!」
柚月は、私を指差す。
「菜月。」

そこで、チャイムが鳴って、会話は途切れた。
「菜月も早く準備しろよ。」
柚月に言われて、私は慌てて準備を終わらせる。

それにしても…なんか、最後になずなに睨まれたような…